競技結果報告

b0180387_1914036.jpg


【「学生」という立場で】
これからの建築界を担う存在として、学生とはとても強く、大きな母体であろう。近年は特に卒業設計日本一決定戦などの卒業設計展の盛り上がりの影響もあり、学生作品はその影響力を段々と強めてきているように見える。
学生とは、良くも悪くもとても吸収が早い。それゆえ、インターネットや雑誌などのメディアを媒介として、評価された作品の情報は「流行」として爆発的な影響力を発揮する。それは、情報の単純な吸収による「模倣」のような作品を多く生み出し、学生作品の無個性化に拍車をかけているということは、否定できない事実であろう。
しかし、この現象は私たち学生の世代の特色が作り出されている過程のしるしともとらえることができるのではないか。無個性化へと走るこの現象はしばらく続くであろうが、その先には自らに対する批判的な視線が発見されるのかもしれない。
そこで今回は、あえて学生の作品を学生のみで評価するというコンペを開催した。私たち学生は、自らに対してどのような評価を下すのか。そこで、どのような議論が生まれるのか。自らを見つめ直す機会として、自らの意思を表現する機会として、この公開審査の場は設けられた。

【拮抗する上位作品】
2009年9月2日13:00。東京都市大学(旧武蔵工業大学)世田谷キャンパス建築学科棟には、さまざまな学校からの見学者・競技者が集まった。講師には、寶神尚史先生(日吉坂事務所・明治大学兼任講師)・岡山理香先生(東京都市大学准教授)を迎え、予選の巡回審査が始まった。無記名の作品に対し、一人3票を重複なく3作品に対して投票する。投票の結果上位7作品と、各講師の推薦枠として2作品、計9作品が決勝審査へと進出した。当初、決勝進出作品は8作品の予定であったが、上位の得票数が拮抗していたため、予選得票数7位のNo.002の作品も決勝進出となった。決勝審査では、エントリーナンバー順にプレゼンテーションが行われた。プレゼンは一人あたり3分+質疑応答5分の8分間。

[決勝進出者(プレゼンテーション順)]
No.013 東京理科大学2年 城亮介
      「いつものカフェを細長くしてみた。」
No.018 東京都市大学2年 粟竹直輝・辻慎太郎・冨永信彦
      「Zelkova」
No.022 大阪市立大学3年 西原隆泰・河合弘樹・木村悠嵩・林一樹
      「大阪うらながや~長屋の裏側からの近隣関係の再構築~」
No.030 明治大学2年   榎本翔太
      「渋谷的渋谷建築」
No.031 明治大学3年   若田優樹
      「都市で祈る。」
No.040 東京都市大学1年 羽田あや奈・田中明子・浜田あゆ美
      「教会」
No.041 明治大学3年   木村宜子
      「あちらへの窓 こちらへのドア」
No.044 明治大学3年   大谷拓樹
       「森のように、雲のように。」
No.002 東京電機大学2年 渡辺晋太郎・小幡友樹
       「現+建=? すわって、あつまって、はなしあって」

【それぞれの2・50・X】
上位入選作品等、いくつかのプレゼンテーションを抜粋して記す。
「渋谷的渋谷建築」は、その建築の有効性・存在意義についての議論を呼んだ。会場からは、渋谷という街を象徴するモニュメントのような存在としての提案や、製作者のいう「要素の整理」に関しての疑問が多く寄せられた。最終的には、具体的な機能が備わっていないということが、問題点として指摘された。しかしこの作品は、渋谷という街のカオスについて果敢に取り組んだ、意欲的な作品と言えるだろう。
「都市で祈る。」は、都市型の墓地に対する新しい提案であった。ロッカー型の墓地に対する作者の体験から、祈りの対象としての墓石の存在に重点置いた作品であり、過密な都市のなかで墓地としての周辺環境への配慮なども評価を得た。
「教会」は、巡回審査の際から空間をとても強くイメージさせる模型が話題となった。オフィス街に大人の逃げ場所のように置かれ、癒しでも現実逃避でもない、神に対する恐れや安心感を体験する場の提案であった。1年生ながら、とても強い空間のイメージの提案と表現が評価された。しかし、実際に作られたその空間は製作者の想定をはるかに超える威圧感をもつであろうことは明白であり、自分がどのような空間を作り出しているのかということについて、将来的にもっと自覚的になることが期待される。
「あちらへの窓 こちらへのドア」は、岡山先生から「今回の課題に対して、100点の解答」という高評価を得たが、「正解」が必ずしも面白く、新しい提案ではないという意見も付け加えられた。結果的に優勝を勝ち得たが、その結果は寶神先生のおっしゃったとおり「予想通りで、それが逆にちょっと残念」であったのかもしれない。完成度が高い作品だけに、さらなる発展が求められた作品でもあった。
「森のように、雲のように。」は、分離派の作品を彷彿とさせた。言葉と一枚の断面図から表現される空間は、その具体的な完成度よりも、それぞれの脳内でのイメージにより補完されたものとして評価を受けたようである。会場からは、今回の課題設定との関係性が指摘され、50mという長さを必ずしも活かしてはいないのではないかという指摘もあった。

【「学生」を超えられるか】
決勝投票では、見学者が一人1票を投じた。優勝は、上にも記したとおり「あちらへの窓 こちらへのドア」。2位は「森のように、雲のように。」。3位は「教会」であった。
結果としては、課題に求められているような「敷地との関係性」があまり重要視されていない作品が多かったように思える。それをカバーしたのは、表現力や模型の完成度であったのだろう。
上位入賞作品には必ずしも無個性とはいえない作品が並んだ。また、そのような作品たちの得票数も拮抗していることから、無個性化にはまだ歯止めがかかるのかもしれないという兆しを見ることができたと思う。しかしやはり学生という立場であるため、自分たちの提案を強く的確に表現する力をそれぞれがつけていく必要があるのだろう。表現は、取り繕うためのものではなく、伝えるためのものだということに、もっと自覚的になっていくべきである。
公開審査後の懇親会では、それぞれが盛んに意見の交換を行っていた。学生の、学生による、学生のためのコンペ。その中で、私たちは自分たち自身のことについて少しでも見つめ直すことができただろうか。今回のコンペで得たことや学んだこと、それが刺激となり新たな表現を生み出していくことを運営部一同祈っています。


[競技結果]
優勝
No.041 明治大学3年 木村宜子
      「あちらへの窓 こちらへのドア」
2位
No.044 明治大学3年 大谷拓樹
      「森のように、雲のように。」
3位・岡山賞
No.040 東京都市大学1年 羽田あや奈・田中明子・浜田あゆ美
      「教会」
寶神賞
No.031 明治大学3年 若田優樹
      「都市で祈る。」
b0180387_1974627.jpg
[PR]

  by DOM_2009 | 2009-09-05 16:56 | 運営部より

課題文+登録要項 ※タイムテー... >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE